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【山沖】夢かうつつか、まぼろしか


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続きからどうぞ。

 時折とても長い夢を見る。

 その夢は長いようで、実はあっという間だ。

 

「…っ」
 カーテンを閉め切った保健室のベッドの上で沖田はびくんと身を跳ねさせた。
 じとりと湿った掌をシーツで拭い、荒い息を整える。

 また、あの夢か。
 何度も見慣れたはずなのに、それを見るたびに沖田の頭はがんがんと金槌で打たれたような気分に見舞われる。気持ちが悪い。沖田は乾いた喉を潤そうと、水を求めて白いカーテンをシャッと開けた。
「あぁ、起きたんですか?」
 入口脇のパイプ椅子に座っていた人物が振り返り、そう言った。

 何でここに居るの。一瞬考え、そう言えば彼は保健委員だったなと思い起こす。以前、科学の授業中に火傷した沖田の手当をしたのも彼だった。彼は人の怪我を診るのが仕事だったのだ。
 ずきん、と。頭が痛んだ。


「沖田さん!大丈夫ですか!?」
 頭を押さえ蹲る沖田に驚いて、山崎は慌ててベッドへ走り寄った。額に浮かぶ汗と、その苦悶の表情に「先生を呼ばなければ」とドアを振り返る。
 そんな彼の腕を掴んだのは、他でもない沖田だった。
 この頭痛の原因は分かっているし、このままじっとしていれば治まるのが常だった。だから今更他の人を呼んで、この無様な姿を見せる必要はない。そう思ったのだ。
「、いい…ッ」
「は?」
「僕のことは…いい、から…放っ」
 その言葉に目を見開いた山崎はカッとなって思い切り息を吸い込んだ。

「放っておけるわけないでしょう!!」
 その余りの怒声に沖田は眉を顰めた。それに気付いた山崎が慌てて小さく謝る。
「沖田さん。あなたの、その不調を隠す癖どうにかなりませんか」
「別に隠してなんか」
「何かあってからでは遅いんです。前も、そうだったじゃありませんか」
「前…?」
 
 ふ、と二人の間に沈黙が落ちた。
 
 もしや、と思って目の前の山崎を見つめても、彼は何も言わない。
 彼はただ、不思議そうに眉をひそめただけだった。彼自身、放った言葉に困惑していることは確かなようだった。
 
 じゃあ、いいや。そう思った沖田は今まで掴んでいた腕を放す。ぱたりと力なく落ちた手が白いシーツに沈んだ。
「沖田さん?」

 ふ、と一つ笑って、沖田は一旦夢の内容を忘れることにした。
 自分も彼も、二人とも解っていないことを問い詰めた所でどうしようもない。


 いつの間にか、頭の痛みは消えていた。
 
 

夢かうつつか、まぼろしか


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